最近、「終活(しゅうかつ)」という言葉をよく耳にしませんか? 自分の人生のおわりを見つめて、いろいろな準備をしておくことです。ひと昔前は、もっと年を重ねてから考えるイメージでしたが、このごろは元気な50代で「終活」を始める人が増えているそうです。
「え、まだバリバリ元気なのに、ちょっと早くない?」 「なんだか縁起でもないような…」
そう感じる方も、きっと多いと思います。 たしかに、早く始めるからこその良いこともあれば、逆に「困ったこと」が起きてしまう可能性もゼロではありません。
この記事では、50代から終活を始めるときに知っておきたいメリットと、気をつけておきたい注意点を、わかりやすい言葉でご紹介します。ご自身のこと、あるいはご両親のことを考えるときの、ヒントになればうれしいです。
もしかしたら困るかも? 早期終活で気をつけたい4つのデメリットと対策
「よし、やろう!」と意気ごんで始めたものの、思わぬ壁にぶつかることも。まずは、50代からの終活で、どんなことに気をつけたらいいのか見ていきましょう。
1. 心のプレッシャー 「おわり」と向き合うしんどさ
終活で避けて通れないのは、自分の「おわり」を具体的に考えることです。 お仕事や趣味、子育てに忙しい毎日を送っている50代にとって、いきなり「死」というテーマと向き合うのは、想像以上に心が疲れてしまうことがあります。
「自分がいなくなったら、家族は大丈夫かな…」 「もし大きな病気になったらどうしよう…」
将来への不安がどんどん具体的になって、気持ちが落ちこんでしまうことも。本来、これからの人生をもっと安心して楽しむための準備なのに、今の楽しい気持ちや、やる気を失ってしまっては、なんだかもったいないですよね。
とくに真面目な人ほど、「あれもこれも完璧にしなきゃ!」と自分を追い詰めてしまいがちです。終活は、たんたんと進める事務作業のようで、実はとてもデリケートな心の作業。がんばりすぎず、「疲れたら休む」くらいの、無理のないペースが大切です。
2. 家族との関係 「良かれと思って」がケンカのきっかけに
終活の大きな目的は「残された家族の負担をかるくすること」。でも、その進め方を少し間違えると、家族の間に思わぬ溝をつくってしまうことがあるんです。
よくあるのが、お家の片づけ、いわゆる「断捨離」でのトラブルです。 自分にとっては「もういらない物」でも、家族にとっては「大切な思い出の品」ということはよくありますよね。相談せずに捨ててしまって、「なんであんなに大事にしてた物を!」と、いさかいになってしまうケースは少なくありません。
さらに、お金のことや、お葬式のこと、お墓のことといった、もっとナイーブな話になると、やっかいです。本人は「これが一番いいはず」と思って決めたことでも、家族それぞれの考えや気持ちとぶつかってしまうことがあります。「誰が一番、親の面倒を見てきたか」なんて話まで出てくると、こじれてしまうことも…。
終活は、自分のことではあるけれど、家族みんなに関わる一大プロジェクトです。「こう決めたから」と伝えるのではなく、「こう考えているんだけど、どう思う?」と、みんなで話し合うテーブルにつくこと。それが、なによりも大切になります。
3. 計画が「時代おくれ」に? 長い時間が変えるもの
50代で立てた終活の計画が、本当に必要になるのは、もしかしたら20年、30年も先のことかもしれません。その長い時間のあいだには、自分や家族のまわりの状況は、きっと大きく変わっているはずです。
たとえば、こんなことです。
- 家族のかたち: 子どもが結婚したり、孫が生まれたり。
- お金の状況: 退職金が入ったり、家の価値が変わったり。
- 医療のこと: 今はないような、新しい治療法が生まれているかもしれません。延命治療などに対する考え方だって、変わるかもしれませんよね。
- 社会のルール: 相続の法律が変わったり、スマホやネットのサービス(デジタル遺産)をどうするか、なんて新しい問題も出てきます。
せっかく作った遺言書やエンディングノートが、そのままでは役に立たなくなってしまうこともありえます。
終活の計画は、一度作ったらおしまい、ではありません。スマホのアプリをアップデートするように、定期的に見直して、今の自分に合わせて新しくしていく必要があるんですね。早く始めると、その「見直し」の手間が何度か必要になる、ということは覚えておくといいかもしれません。
4. 時間やお金、そしてリスクのこと
終活って、やってみると意外とやることがたくさんあって、時間もエネルギーもかかります。財産をリストアップしたり、保険の契約書を読み返したり、いらない物を片づけたり…。
また、法律の専門家である弁護士さんや、税金の専門家である税理士さんにお願いするときには、もちろん費用もかかります。
そして、もうひとつ気をつけたいのが、終活に付けこむ悪い人たちの存在です。「無料で相談に乗りますよ」なんて言いながら、高い商品を売りつけたりするケースも残念ながらあるようです。
終活は、お金や個人情報など、とても大切なことを扱います。だからこそ、相談する相手は、信頼できる人かどうかを慎重に見きわめることがとても重要になります。
50代から始めるからこそのメリット
ちょっと心配なことをたくさんお話ししましたが、もちろん、50代から始めるからこその、大きなメリットもありますよ。
1. 元気なうちだから、「質の高い」準備ができる!
なんといっても一番のメリットは、心も体も元気なうちに、自分のペースでしっかりと準備を進められることです。
タンスの奥から重いものを運び出したり、たくさんの書類に目を通したり。こういう大変な作業は、年を重ねてからだと、気力はあっても体力がついていかない…なんてことになりがちです。
頭がスッキリしていて、判断力が確かなうちに、いろいろなことを比べて、自分で「これだ!」と納得して決められる。これは、将来の大きな安心につながります。 先ほどお話しした「時間や手間がかかる」という困った点も、元気な50代のパワーがあれば、きっと乗り越えやすいはずです。
2. これからの人生が、もっと輝きだす!
50代の終活は、「おわりの準備」というネガティブなものではありません。むしろ、「これからの人生を、どう楽しく生きようか?」を考える、最高のきっかけなんです。
自分のこれまでをふり返ることで、「本当にやりたかったこと」や「大切にしたい人との時間」が、くっきりと見えてきます。それはまるで、自分の人生の「宝さがし」のよう。
「おわり」を少しだけ意識することで、不思議と「今」という時間が、もっとキラキラして見えてくるんです。 終活は、「のこりの人生を最高にするための作戦会議」。そう考えたら、なんだか少し、ワクワクしてきませんか?
じゃあ、どうやって始めたらいいの?
終活をスムーズに進めるカギは、やっぱり「家族との会話」です。ここでは、家族と話すときのちょっとしたヒントをご紹介します。
話し合いのヒント
- 世間話から入ってみる: いきなり「終活の話なんだけど…」と切り出すのは、相手も身構えてしまいますよね。「そういえば〇〇さんのところ、お墓を建てたらしいよ」みたいに、だれかの話から、自然な流れで入るのがおすすめです。
- 「相談」というスタンスで: 「こう決めたから」と一方的に話すのではなく、「こうしようと思ってるんだけど、どうかな?」と、相手の意見を聞く姿勢が大切です。
- まずは「聞く」ことから: 自分の考えを話す前に、まずは家族の話をじっくり聞いてみましょう。相手の気持ちを受けとめることが、あたたかい会話の第一歩です。
- 「ありがとう」を伝える: 終活の話は、ふだんは言えない「ありがとう」を伝える、とても良いチャンスです。感謝の言葉は、場の雰囲気をぐっとやわらかくしてくれます。
まとめ:終活は「これからを良くする」ための旅
50代からの終活には、たしかに気をつけておきたいポイントがいくつかあります。 でも、そのポイントさえ知っておけば、きっと上手に進めていけるはずです。
なによりも大切なのは、終活は「どう終わるか」を考えることで、**「これからを、どう最高に生きるか」**を見つけるための活動だということです。
完璧じゃなくて大丈夫。 ご自身のペースで、そして家族とお茶でも飲みながら、未来の話をしてみませんか? その会話そのものが、きっとかけがえのない宝物になるはずです。
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